有料ゲーム危機の時代 Free to Play(基本プレイ無料)で収益化はできるか

2009年07月08日(水)
By Naoyuki Yamada

Free to Playという言葉があります。日本語だと「基本プレイ無料」でしょうか。英語ではF2Pと略されることが多いです。ユーザーがそのゲームをプレイするのは基本的には無料で、付帯サービスを受ける場合や、ポイントやアイテムを買う場合などにお金を払う、または一切お金を払う必要がないゲームの種類をさしています。

ソーシャルゲーム・ソーシャルアプリケーションというジャンルは完全にFree to Playの世界。今回のエントリーのテーマは、じゃあそれで収益化できるのか?ですが、Free to Playというモデルが成り立つことが確実になったからこそ、ソーシャルゲームというジャンルもできてきたというのが私の考えです。最近読んだ記事をまとめてみます。

なお、本エントリーは下記の記事(というかタイトル)を参考にしています。併せて読んでいただくとよいと思います。

有料ゲーム危機の時代 iPhoneアプリは「ゼロ化」の法則に立ち向かえるか デジタル家電&エンタメ-最新ニュース:IT-PLUS

ソーシャルゲームの前に、MMOはFree to Playの前途を切り開いてきた

パッケージゲーム販売から月額課金、そしてアイテム課金へというビジネスモデルの変化は、MMO業界が1990年代後半から現在にかけて直面してきた変化でした。ウェブ自体が無料という前提の中で、Flashなどリッチコンテンツの手段が整ってきたことでゲームコンテンツは無料化の圧力に絶えずさらされてきました。いまでは新しく始まるサービスのほとんどはFree to Playで、その中で収益化を模索しています。

Gamasutraに「What are The Rewards Of ‘Free-To-Play’ MMOs?」(Free to PlayのMMOのうまみは?)という記事が上がっていました。具体的な数値を挙げて、MMOを運営する側からみてFree to Playという道を採用することの利点は何かを分析しています。

Gamasutra – Features – What Are The Rewards Of ‘Free-To-Play’ MMOs?

MMO運営の収益をはかるうえでよく使われる指標の1つにARPUがあります。Average Revenue Per Userの略で、ユーザー1人あたりの収入のことです。ただしこれではFree to Playモデルにおいては参考値にならないとしてARPPU(Average Revenue Per Payed User:実際に支払いをしたユーザー1人あたりの収入)を使う場合もあります。いわゆるRegisterd User(登録ユーザー)と実際のアクティブユーザーがかけ離れている数値であるのはよくある話で、これでは正確なビジネスの話ができませんよね。そもそもARPUなどの数値も広く発表されているわけではなく、十分なデータが集まっていないのが現状です。

 

そんな状況の中で、2005年に自社のサービスをFree to PlayにしたThree Rings DesignのDaniel James氏は「We just jumped in,」(ただ飛び込んだ)と振り返っています。それから約5年、James氏は自ら試行してデータを蓄積してきました。

それによるとARPUは1ドル〜2ドル、ARPPUは50ドル。ユーザーの中で実際にお金を払うユーザーは全体の10%だったとのことです。James氏は注目すべきはARPPUではなくARPUのほうだとしており、ARPUが1ドル〜2ドルあればビジネスとしてやっていくことができ、それ以下だと厳しいとしています。

 

Metaplaceを運営するRaph Koster氏は、「Free-to-Play is all about upping your ROI.」(Free to Playは投資収益率を上昇させる)と述べています。Free to Playにする最大の意味は月額課金ではリーチできない層のユーザーに少額課金を通じて参加してもらうことであり、Free to Playを採用しないほうがよい理由としてはユーザーのゲームに対するコミットメント度合いを低下させるからだそうです。

Metaplaceはバーチャルワールドなので、アイテムは自由に作成することができます。そこでMetaplaceが現在たった1つ課金しているものが、「イベント時の人数制限ブースト」。例えば10ドル支払うことで、普段はそのフィールドに10人しか入れないものが、100人入れるようになる、といったものだそうです。

Raph Koster氏の運営するMetaplace
Safari002.jpg

 

Lightspeed Venture PartnersのJeremy Liew氏は投資家として、Free to Playのサービスに出資しています。Liew氏はFree to Playのジャンルでは小規模の企業が優位であるとしており、素早く変化できない大規模の企業は生き残るのが難しいだろうと述べています。

また、Free to Playのメリットとしてリリース当初のユーザーの期待値レベルを低いところに保てるので、早期にリリース・サービス開始することができ、開発時間・コストを抑えることができるということも挙げています。

私はこのことは良し悪しがあると思っていて、最初からバグだらけで完成度の低いサービスをすすんで使うユーザーは多くないと思いますが、的確なロードマップが敷かれていて、リリース後も日を追う毎に完成度が高まっていく開発体制と、ユーザーを引きつけ続けるだけの運営ノウハウの両方が必要ではないかと思います。

Free to Playの10個のビジネスモデル

Free to Playのビジネスモデルを網羅的にみてみます。FreeToPlay.bizというサイトから、「Top 10 Revenue Models for Free To Play Games」(Free to Playゲームの10個の収益モデル)という記事を紹介します。

 

(1)バーチャルアイテムの販売
アイテム課金です。これが一番多く採用されていると思います。ポイント購入なども含みます。

(2)有料課金層をつくる
Free to Playの層以外に、プレミアムサービスを提供するなどして有料課金ユーザーの区分も設ける。

(3)広告
Google Adsenseなどのバナー広告・ゲーム内でのプロダクトプレイスメント・ゲーム内の動画広告などがあります。

(4)バーチャルの土地販売・維持費
ゲーム内の土地を販売したりSecond Lifeはこれで多額の利益を上げています。

(5)リアル世界の商品販売
ノベルティグッズを売るとか、アバターをリアルのフィギュアにするとか、といったリアル世界での物販につなげる方法です。

(6)オークションとプレイヤー間取引の手数料
アイテム課金の発展形。

(7)拡張パックの販売
コンテンツや機能の追加を拡張パックとして販売する方法。Guild Warsなんかがこれにあたります。

(8)イベント・トーナメント等での課金
特別なイベント時に課金する。さきほどのMetaPlaceの例はこれですね。

(9)「TrialPay
提携している他のサービスでお金を使えば当該のサービスが無料になるというもの。こんなのがあるんですね。

(10)寄付
熱心なユーザーやパトロンからお金を寄付してもらう方法。

このエントリー自体は2007年のものなので、今だともっと多くの方法が編み出され、実際に収益を挙げている例があるかもしれません。

直接かぶるわけではないですが、こんな記事も今日読んだのでリンクしておきます。

ネット広告の停滞は課金ビジネスで救えるか ビジネス-勝間和代のITマーケットウォッチ:IT-PLUS

課金モデルでやってきたゲームがFree to Playに移行するケースも

リリースからしばらくは(月額)課金モデルを採用し、のちにFree to Playに移行する場合もあります。ここではDungeons & Dragons Online(DDO)とリネージュの例を取り上げます。

プレイ人口が増えないので仕方なくFree to Playにしたという例ではありません。DDOもリネージュも何年も運営してきた超のつくほどの人気タイトルで、収益もあがっています。開発コストの回収が終わったから、という事情もあるとは思いますが、課金ユーザーがまだいるのにあえてFree to Playを選んでいます。

・DDO

DDO Goes Free to Play!

DDO adds free-to-play with Eberron Unlimited [Updated] – Massively

DDOは2006年運営開始。私も非常にヘビーに遊んだタイトルです。私がやっていたころはレベル上限が10でしたが、今は20まで行けるようです。世界も広がって、新しい要素もたくさん追加されているようです。

これまでの課金ユーザーはVIPとしてそのまま残し、無料でもプレイできる層を追加したという形です。

なお、このFree to Play化にあわせてなのか分かりませんが、DDOの日本語版のサービス(さくらインターネットが提供)は2009年10月で終了することになっています。

また、このFree to Playが適用されるのは北米地域だけで、ヨーロッパ地域は対象外のようです。

Dungeons and Dragons Online not free-to-play in Europe

 
・リネージュ

4Gamer.net — ついに無料になった! 「リネージュ」,本日より基本プレイ料金無料のアイテム課金制へ移行(リネージュ 〜Eternal Life〜)

4Gamer.net — 「リネージュ」あえて無料化に踏み切ったその舞台裏は? 「最期の日」の仕掛人に真相を聞いてみた(リネージュ〜The Cross Rancor〜)

リネージュは2001年運営開始。韓国が本家ですが日本でもヒット。アジアのMMORPGの代表といえる存在です。それが2009年3月から無料になりました。上記リンクにある4Gamerのインタビューによると、「コミュニティの活性化」を目指しているようですね。課金モデルをとりつづけることでプレイヤー層が硬直化してしまっているのを打開したい意図があるようです。

DDOと違って課金モデルを廃しての全ユーザー一律無料化になります。

リネージュが無料化にあたって導入している新施策はステータスの再分配と新クラス(職業)。どちらもいまプレイしているキャラクターを’リセット’し、プレイし直してもらうことが目的ではないかと思います。

”無料化”は本質ではない。ゲームというエンタメ自体の変化

ソーシャルゲームのトップ企業の1つ、PlayFishのCEOのKristian Segerstrale氏は数年以内に家庭用ゲーム機はニッチなものになると述べています。

「家庭用ゲーム機はニッチなものとなる」−ソーシャルゲーム大手の大胆予測 – iNSIDE

Playfish’s Kristian Segerstrale // Interview :元の記事

元の記事では特に任天堂を念頭に置いた話をしており、Wiiを「home social gaming device」と褒め称えていますが、任天堂が直面するこれからの課題として「ソフトウェアの流通がデジタル主体になることと、ゲーム自体がオンライン化すること」の2つを挙げています。Wiiがどちらもないがしろにしているとは思いませんが。

私はPlayFishのミッション「Change the way the world plays games」が好きです。デジタルコンテンツの流通コストが低減してきたからこそ、基本無料という垣根の低いかたちが可能になり、多くの人が気軽にゲームというコンテンツで遊べるようになる。その中でもビジネス的に十分な収益を挙げられるゲームが多く登場してきました。

そういう意味では「無料になって、人がゲームにお金を払わなくなってきた」というのは本質ではないと思います。大作としてのパッケージゲームは残るでしょう。映画のように。もうほとんど映画ではないかというような大作ゲームが実際多いですが。

むしろ、Segerstrale氏が「We’re trying to bring games back to that form of entertainment.」(私たちはゲームを(野外での遊びやボードゲームみたいにコミュニケーションして友人と遊ぶかたちの)エンターテイメントに回帰させようとしている)と述べているように、いま、ゲームがあるべきエンターテイメントの姿になっていく過程にあるのではないかと思っています。

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