Facebook(フェイスブック)の創業期を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」(2010)がどこまで事実で、どこがフィクションなのかを探ります。私・大橋直久は、この映画を、映画館・DVD・ネット配信で合計20回以上鑑賞しました。
2026年8月、大橋直久
【疑問1】主人公マーク・ザッカバーグの恋人エリカ(ルーニー・マーラ)は実在した?
「エリカ・オルブライト」という人物は実在しない。映画用に作られた人物であり、ボストン大学の学生だったという設定や、冒頭のレストランでザッカーバーグを振る場面も創作である。
人物も会話も創作(フィクション)
ただし、完全なゼロから作られた人物というわけでもない。ザッカーバーグが2003年10月28日に残したオンライン日記には、「ジェシカ・アローナ」という女性に対する侮辱的な一文が残っていた。脚本家アーロン・ソーキンは、この名前をエリカ・オルブライトに変更したと説明している。
脚本家アーロン・ソーキンが「日記の一文」から想像した
しかし、ジェシカ・アローナが本当にザッカーバーグの恋人だったのか、直前に彼を振ったのか、ボストン大学に在籍していたのかは確認されていない。したがってエリカは、「実在した可能性のある女性についての日記の一文を出発点として、恋人関係や性格、会話、再会場面などを創作した人物」と考えるのが最も正確である。
ザッカバーグ自身も「存在しない女性」とコメント
ザッカーバーグ自身も、エリカについて「現実には存在しない女性」と述べ、失恋がFacebook開発の動機だったという映画の描き方を否定している。
【疑問2】マーク・ザッカーバーグは、恋人エリカの胸のサイズなどを中傷する書き込みを行った?
エリカの胸のサイズを「34B」と記し、「ほとんど何もない」「誇大広告だ」などと中傷する書き込みは、映画の脚本で追加されたフィクションである。保存されているザッカーバーグの実際の日記には、このような文章は存在しない。
女性を名指しして侮辱したこと自体は事実
一方、ザッカーバーグが女性について侮辱的な文章を残したこと自体は事実である。2003年10月28日の日記には、「ジェシカ・アローナは最低の女だ」という趣旨の一文と、「彼女のことを忘れるために何かを作る必要がある」という趣旨の文章が残されていた。
胸のサイズに関する中傷は脚本家の創作
映画では、ジェシカ・アローナの名前が「エリカ・オルブライト」に変更されただけでなく、胸のサイズや「誇大広告」といった性的な中傷も加えられている。したがって、「ザッカーバーグが女性を名指しして罵倒した」という骨格は事実だが、胸のサイズについて書き込んだという部分は創作である。
Facemashを制作した夜の日記は実在する
そのほか、酒を飲んでいたこと、学生名簿の写真を動物の写真と比較する案を考えたこと、2人の学生の写真を並べて選ばせる方式を採用したこと、各寮の名簿から写真を取得した手順などは、実際の日記に記録されている。映画はこの日記を土台にしながら、ザッカーバーグの女性に対する怒りや復讐心を強調する文章を追加したのである。
【疑問3】ザッカバーグの友人エドゥアルドは、人気投票システム「フェイスマッシュ」のプログラムを書いた?
エドゥアルド・サベリンが「フェイスマッシュ(Facemash)」のプログラムを書いたという事実は確認されていない。同サイトのプログラムと、投票結果から順位を計算するコードを作成したのは、マーク・ザッカーバーグである。
映画でもプログラムを書いたわけではない
映画でエドゥアルドが提供したのは、プログラムそのものではない。ザッカーバーグから頼まれ、チェス選手の実力を順位化する「イロ・レーティング」の計算式を窓ガラスに書き、それをザッカーバーグが「Facemash」のプログラムに組み込むという描写になっている。
同時代の記事は「ザッカーバーグが全面的に制作」と報道
「Facemash」事件直後の2003年11月、ハーバード大学の学生新聞「ハーバード・クリムゾン」は、同サイトが「全面的にザッカーバーグによって制作された」と報じている。学生名簿から写真を収集する処理だけでなく、投票のたびに順位を計算するコードも、ザッカーバーグが書いたとされている。
エドゥアルドが計算式を提供した場面は映画の脚色
ザッカーバーグが残した当時の日記には、友人のビリー・オルソンが「2人の学生を比較させる」というアイデアを出したことは記録されている。しかし、エドゥアルドがイロ・レーティングの計算式を提供したという記録はない。したがって、「Facemash」を開発したのはザッカーバーグであり、エドゥアルドが順位計算に協力したという場面は、2人の友情と共同作業を印象づけるための脚色と考えるのが妥当である。
「ソーシャル・ネットワーク」は21世紀ベスト映画
私(大橋)は、「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)こそ、21世紀に入ってから今日までに製作された映画の中で、最高の一本だと思っています。
時代の空気をとらえた
最大の理由は、この作品がFacebookの創業物語を描きながら、同時に21世紀という時代の空気と社会を動かす新しい論理を、驚くほど的確に捉えていることです。人間関係を数値化し、個人の承認欲求を巨大な事業へと変え、若者の技術力が既存の権威や階級を一気に飛び越えていきます。2010年の時点で、インターネットと巨大IT企業が人々の生活や価値観を支配していく未来を、ここまで鮮明に予見した映画はほかにありません。人と人を「つなぐ」サービスを作った主人公が、物語の最後には孤独の中に取り残されるという皮肉も、その後のソーシャルメディア社会やAI・ロボット社会を象徴しています。
セリフの一つ一つが洗練
アーロン・ソーキンによる脚本も圧倒的です。登場人物たちの会話は猛烈な速度で展開しますが、セリフの一つ一つが洗練されており、知性、野心、嫉妬、屈辱、友情の亀裂といった感情が、鋭い言葉によって次々と浮かび上がります。冒頭の恋人との会話から、エドゥアルドがザッカーバーグに詰め寄るクライマックスまで、作品全体が強い緊張感を保ち続けています。デヴィッド・フィンチャーの冷徹で精密な演出、トレント・レズナーとアッティカス・ロスによる不穏な音楽、緻密な編集も一体となり、本来なら地味になりかねないプログラミングや企業設立、訴訟の物語を、息詰まるサスペンスへと変えています。
ショーン・パーカーら鮮烈な人物造形
実在する人物、それも当時まだ若く、世界的な影響力を急速に強めていた存命中の人物を、実名のまま批判的に描いた大胆さも特筆すべきです。もちろん、エリカ・オルブライトのような架空の人物や、事実を再構成した場面も多く、歴史をそのまま映したドキュメンタリーではありません。しかし、対立する当事者たちの証言を交錯させることで、「誰の語る物語が真実なのか」という問いそのものを作品の構造に組み込んでいます。ジェシー・アイゼンバーグのマーク・ザッカーバーグ、アンドリュー・ガーフィールドのエドゥアルド・サベリン、ジャスティン・ティンバーレイクのショーン・パーカーをはじめ、それぞれの人物造形も鮮烈で、短い登場時間の人物まで強い存在感を放っています。
何度見返しても新しい発見
そして何より、「ソーシャル・ネットワーク」は年月の経過によって古びるどころか、時代が進むほど重要性を増しています。公開当時にも高く評価されましたが、その後、ソーシャルメディアが社会、政治、報道、人間関係に及ぼす力が明らかになるにつれ、この映画の先見性はいっそう際立つようになりました。何度見返しても新しい発見があり、テンポも緊張感も失われず、常に現代の物語として見ることができます。
アカデミー賞が「英国王のスピーチ」だったのは間違い
アカデミー賞では、ハーベイ・ワインスタインによる強力な賞レース戦略も追い風となった「英国王のスピーチ」に作品賞を譲りました。しかし、公開から15年以上を経た現在、映画史における両作品の評価と存在感には、次第に大きな差が生じています。「英国王のスピーチ」が端正に作られた優れた歴史ドラマであることは間違いありませんが、21世紀の社会そのものを切り取り、その後の世界まで予見した「ソーシャル・ネットワーク」の射程には及びません。時代を映しただけでなく、時代がこの映画に追いついてきた――そこに、「ソーシャル・ネットワーク」を21世紀最高の映画と考える最大の理由があります。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)向けソーシャルアプリの開発が急ピッチで進められています。
2009年6月、日経コンピュータなどを元に作成・編集(2026年8月に加筆・再編集)
米ロックユー
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)向けアプリで急成長
2005年11月に設立した米ロックユー。設立当初は知名度のない小さなソフト開発会社の1社に過ぎなかったが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)向けアプリケーション開発で急成長を遂げた。英語圏や中国語圏の大手SNS向けに提供する米ロックユー社のアプリケーションは、2008年時点で月間利用者数が1億800万人、月間閲覧数は20億ページビューに上った。ヤフーやグーグルへの投資実績があるベンチャーキャピタルの米セコイアキャピタルなどからは、2000万ドル(約20億円)以上の出資を受けたとされる。当時、インターネット関連ベンチャー企業としては、最も注目の1社だった。
2009年12月、不正アクセスを受け3200万人分のパスワードが流出
しかし、同社の急成長に大きな影を落とす事件が起きた。2009年12月、ロックユーのデータベースが不正アクセスを受け、3200万人を超える利用者のメールアドレスとパスワードが流出したのである。
被害を深刻にしたのは、パスワードがハッシュ化されず、読み取ることのできる「平文」のまま保存されていたことだった。攻撃には、以前から広く知られていた「SQLインジェクション」と呼ばれる手法が用いられた。ロックユーの情報管理体制は、当時の基準に照らしても極めて不十分だった。
世界的に知られたパスワード一覧の名称に
流出したパスワードは、後に重複などを整理した「rockyou.txt」という一覧としてインターネット上に出回った。この一覧は、推測されやすいパスワードを調べるセキュリティ検査などに広く利用される一方、不正なログインを試みる「辞書攻撃」にも使われた。皮肉にも、ロックユーの社名は、成功したSNS企業としてよりも、世界的に知られたパスワード一覧の名称として残ることになった。
米連邦取引委員会(FTC)と和解
2012年には、米連邦取引委員会(FTC)との和解が成立した。ロックユーは、包括的な情報セキュリティー対策を導入し、その後20年間にわたって2年ごとに第三者の監査を受けることを求められた。さらに、13歳未満の子供およそ17万9000人から、保護者の同意を得ずに個人情報を収集していたとして、25万ドルの民事制裁金を支払うことになった。
ソーシャルゲームと広告配信の会社に
ロックユーはその後、SNS向けアプリケーションからソーシャルゲームと広告配信へ事業の軸足を移した。2010年代前半には複数のゲーム開発会社を買収。2014年以降は、他社が運営終了を予定していたゲームの権利を取得し、既存の利用者を維持しながら広告収入を得るという独特の戦略を進めた。「ガーデンズ・オブ・タイム」「ワーズ・オブ・ワンダー」「シティ・ガール」など、多数の人気ゲームを引き継いでいる。
2019年、破産
この戦略には、サービス終了を惜しむ利用者から歓迎された面もあった。しかし、成長期を過ぎたゲームを広告収入によって維持する事業には限界があり、かつての勢いを取り戻すことはできなかった。最終的にロックユーは2019年2月13日、米連邦破産法第7章の適用を申請し、清算手続きに入った。破産申請時の負債は約1490万ドルに上り、債権者として738の広告関連企業やメディア企業などが記載されていた。
プラットフォームへの依存リスク
創業からわずか数年で1億人を超える利用者を獲得し、世界有数のベンチャーキャピタルから巨額の資金を集めながら、約13年で姿を消したロックユー。その歩みは、SNSという巨大なプラットフォームの成長に乗った企業の爆発力を示すと同時に、情報管理の失敗や特定のプラットフォームへの依存が、企業の信用と事業基盤を大きく揺るがすことを示す事例となった。
米ジンガ、米スライド、米プレイフィッシュ
インターネット関連ベンチャー企業
こうしたSNS向けアプリケーション開発で急成長しているのは、1社や2社だけではない。ロックユーと同様に急成長している企業には、米ジンガ、米スライド、米プレイフィッシュなどがある。
「iPhone」アプリ開発
アップルの「App Store」
SNS向けだけでなく、携帯端末向けのアプリケーション開発においても同様の動きがある。米アップルのスマートフォン「iPhone」上でアプリケーションを開発するベンチャー企業が続々と登場している。アップルが運営するアプリケーションのダウンロードサイト「App Store」は、2008年7月の開設から約9カ月で10億ダウンロードを達成した。
Web 2.0の流れをくむ収益モデル
ソーシャル・アプリケーション
SNSと携帯端末で流通するアプリケーションには共通点がある。SNS事業者や携帯事業者などがAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)の公開や開発キットの提供などの形で、SNSや携帯端末で動作するアプリケーションの開発環境を、個人や企業を問わず外部の開発者に広く開放している点だ。開発言語も一般的なPHPやC言語の派生言語などで、幅広い開発者が参加できるため、「ソーシャル・アプリケーション」と呼ばれる。SNS事業者や携帯事業者は基本的にアプリケーションを開発せず、外部の開発者に任せている。
Web 2.0の潮流
消費者がコンテンツを生成するブログやSNS
このアプリケーション開発体制のベースには、Web 2.0の潮流がある。Web 2.0に明確な定義はないが、大筋は情報やサービスが提供者の手を離れて、インターネット上で組み合わされたり加工されたりする最近のインターネットの動向を意味する。これまで、Web 2.0のサービスで代表例と言えば、消費者がコンテンツを生成するブログやSNSなどが挙げられた。
収益モデル
企業からの広告出稿に頼る
ただ、こうしたサービスを支えるコンテンツは消費者から集められたものが多く、コンテンツを有料で販売することは難しい。収益モデルという点では、アクセス数を集めて企業からの広告出稿に頼るという手法に限定されがちだった。
Web 2.0のサービスは儲かる
コンテンツとしての商品的な価値
一方、一般的な消費者がブログやSNSに書き込む日記などのコンテンツと比べ、プロの開発者が提供するアプリケーションはコンテンツとしての商品的な価値は高い。実際、オープンな環境で開発されたSNSや携帯端末向けアプリケーションの多くが、有料で販売され、需要も急増している。Web 2.0のサービスは儲かるとの認知が一気に広まり始めた。
iPhone上陸で一躍注目の的に
App Storeを導入した第3世代iPhone
こうしたビジネスのプラットフォームとして一般的に最も知られるのはiPhoneだろう。正確にはApp Storeを導入した第3世代iPhoneである。
有料アプリケーション
数千万円を売り上げる開発者も
有料アプリケーションは数百円程度で販売されるものが多く、一つひとつのアプリケーション単価は低い。しかし、それが世界中のiPhone利用者に向けて販売されることで、開発者にとってはかなりの収入源になる可能性を秘める。なかにはApp Storeを通じて数千万円を売り上げる日本人の開発者までいるほどだ。
iPhoneは2000万台出荷
ゲームや便利ツール
第3世代のiPhoneは発売から3日間で100万台を販売した。今や全世界でiPhoneは2000万台近く出荷しており、開発者は世界中のiPhone利用者に向けてアプリケーションを販売できる。このため、ゲームや便利ツールなど2万~3万点が流通する。
App Storeの仕組み
購入額の3割が手数料
App Storeの仕組みはこうだ。開発者はアップルの規約に沿ってアプリケーションを開発し、App Storeを通じて販売する。利用者はパソコンやiPhoneを通じてApp Storeから欲しいソフトを購入。購入額の3割を手数料としてアップルが徴収し、残りの7割がアプリケーションの開発者に支払われる。
NTTドコモの「iモード」
NTTドコモによる対面審査
これだけなら、国内でもすでに着メロなどを販売するNTTドコモの「iモード」などがあった。しかし、iモードで販売するには、NTTドコモによる対面審査をパスしなければならず、採用されてもサービス内容の変更などを求められることがある。App Storeではこれがオンライン上で処理され、開発者は一定の規約さえ守れば自由にソフトを開発できる。
アプリとSNS使う新たな交流手法
米フェイスブック
一方、冒頭で紹介したようにロックユーなどが提供するSNS向けアプリケーションは、iPhone向けのアプリケーションを上回る発展を遂げている。なかでも開発環境の外部開放を契機に、これまで圧倒的な地位にあった米マイスペースを超え、世界最大のSNSとなった米フェイスブックの成長が目覚しい。フェイスブックの利用者は英語圏を中心に2億人以上。約66万人の開発者が集い、ゲームや便利ツール、仮想世界など5万2000以上のアプリケーションが流通している。
フェイスブックのアプリケーション
フェイスブック上で動作するアプリケーションの流通がiPhone上よりも活発な背景には、大きく2つの要因がある。
コミュニケーションの潤滑油
アプリケーションを介した交流
1つは、アプリケーションがSNS利用者からSNS上でつながる友人同士のコミュニケーションの潤滑油として受け入れられていることだ。SNS上の交流手法はこれまで、テキストベースが一般的だった。しかし、ゲームなどのアプリケーションを介した交流手法が加わることで、交流目的や話題が大幅に広がる。
プレイフィッシュの「Pet Society」
あくまで目的は友人との交流
例えば、プレイフィッシュが提供する「Pet Society」では、仮想ペットを育成するとともに、育成したペットを友人のペットと交流させることなどができる。無料だが、ペットを着飾らせるアクセサリーや餌などを有料で販売している。ここで重要なのは、利用者はゲームをすることを目的としているのではなく、あくまで目的は友人との交流であることだ。
「PayPal」で代金を徴収
手数料はペイパルに数%のみ
2つ目は、iPhoneに比べ開発者の取り分が大きい点だ。フェイスブックはアップルのように、自社で課金代行サービスを用意していない。開発者の多くは米ペイパルが提供するインターネット決済サービスの「PayPal」を利用して、代金を徴収している。決済手数料としてペイパルに数%を支払うだけで、残りの9割超の売り上げが手元に入る。
有料サービスを提供
息の長い売り上げが期待
また、Pet Societyのようにアプリケーション自体を販売するのではなく、アプリケーションを介したコミュニケーションのなかで様々な有料サービスを提供することが多い。そのため、人気アプリケーションになれば、比較的息の長い売り上げが期待できる。
広告する価値を持つメディア
広告配信ネットワーク
さらに人気アプリケーションは利用者も多いため、これらを束ねれば広告する価値を持つメディアにもなる。実際、多数のアプリケーションの画面に広告を表示する広告配信ネットワークを展開している例もあり、開発者は広告からの売り上げも期待できる。
国内最大手SNSのmixiも開始
「mixiアプリ」の開発環境
米国でのビジネスの盛り上がりを受けて、日本でもSNS事業者や携帯事業者がアプリケーション開発環境の外部開放を始めた。例えば、国内最大手SNSである「mixi」を運営するミクシィは、2008年12月に一部の法人、2009年4月8日に個人を含む開発者向けに「mixiアプリ」の開発環境を公開した。正式なサービスの開始は2009年8月で、それ以降、フェイスブックと同じように約1700万人のmixi利用者がmixiアプリを使えるようになる。
コミュニケーション手法の幅を広げる
フェイスブックと方向性は同じ
mixi上で動作するアプリケーションは、ゲームや便利ツールなどが予想されフェイスブックと大差はない。開始当初の開発環境の公開は限定されるなど、フェイスブックに比べ見劣りする部分はあるものの、目指している方向性は同じ。開発者によるSNS向けアプリケーションを導入することで、コミュニケーション手法の幅を広げるところにある。
独自の収益化支援サービスを提供
ミクシィが販売マージンの2割を徴収
あえて違いを挙げると2つある。1つはフェイスブックが課金代行サービスなどの収益化支援サービスを自社で用意していないのに対し、ミクシィは独自の収益化支援サービスを提供する計画であることだ。有料アプリケーションの販売には、ミクシィが販売マージンの2割を徴収し、残りを開発者に分配する。フェイスブックは開発者に人気がある一方で、自社の売り上げに貢献しづらいという問題があるが、ミクシィは当初から収益を追う基盤も整備した。
SNS利用者の7割が携帯電話経由で利用
パソコンと携帯電話の両方でアプリ利用
2つ目はSNS利用者の7割が携帯電話経由で利用しているという点。そのため、利用者からするとパソコンや携帯電話の両方で同じアプリケーションを利用しているような使用感の実現が必要となる。正式開始から1カ月後の2009年9月から携帯電話向けにもmixiアプリ提供し、2010年10月からは有料のmixiアプリの販売をパソコン向けmixiアプリに先行して携帯電話向けに開始する計画だ。
将来性に携帯事業者も注目
ソフトバンクモバイルの「モバイルウィジェット」
携帯事業者もこの分野については注目しており、最も積極的な動きを見せるのはソフトバンクモバイルだ。ソフトバンクモバイルは2008年11月から「モバイルウィジェット」の名称でサービスを開始した。ソフトバンクモバイルは携帯端末としてiPhoneを販売しているが、iPhoneのApp Storeとは別個のサービスとして提供している。対応機種は8機種、アプリケーションは400程度と規模は小さいが、企業および個人向けに開発キットを提供しており、App Storeに近いビジネスモデルを模索している。
ソフトバンクモバイルの「ジョイント・イノベーション・ラボ」(JIL)
チャイナモバイル(中国移動)および英ボーダフォン
開発者に対して海外市場を舞台に活躍できる可能性も示す。ソフトバンクモバイルは2008年4月、チャイナモバイル(中国移動)および英ボーダフォンと携帯電話関連の技術開発を目的とした「ジョイント・イノベーション・ラボ」(JIL)を設立した。JILは今後、仕様や規格を策定した上で、欧米や中国の携帯電話でも展開できるアプリケーションの開発キットを提供する計画だ。
任天堂のゲーム開発ツール「メイドイン俺」
「wii」と「ニンテンドーDS」の2つを活用
開発環境のオープン化を巡って、全く違う動きも出てきた。任天堂が2009年4月29日からサービスを開始したゲーム「メイドイン俺」がそれだ。据え置きゲーム機「wii」と携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の2つを活用したゲーム開発ツールとなる。プログラミング能力は一切いらず、利用者同士で簡単にゲームを作って交換し合い、さらにそれを改良して交換し合うというような遊び方ができる。
任天堂、ハードやソフトの収益増加を期待
ゲーム開発の敷居を下げる
他のサービスと異なり、開発者が作り込んだゲームを有料で販売することは現時点ではできない。任天堂は開発の敷居を下げることで「開発」という遊びを新たに提供し、ハードやソフトの収益増加を期待する。
Web 2.0を生かしたソーシャル・アプリケーション
新しいITビジネス
国内で、Web 2.0を生かしたソーシャル・アプリケーションの市場は注目され始めたばかり。根付くか否か、これがどのような発展を遂げるかについてはまだ分からない。しかし、Web 2.0の流れを受けた新しいITビジネスが、着実に進化しつつあることだけは間違いないだろう。